「教育訓練給付金を使えば、スクールの受講料が安くなるらしい」と聞いても、実際に自分はいくら払うことになるのかは、なかなかイメージしにくいですよね。
この記事では、厚生労働省と経済産業省の公式情報をもとに、受講料別に「実質いくらになるのか」を早見表にまとめました。あわせて、給付金をもらいそびれないための注意点もやさしく整理しています。
※この記事の金額や条件は、2026年11月時点の公式情報にもとづいています。制度は変わることがあるので、申し込む前に必ず最新の情報をご確認ください。
結論:受講料50万円の講座なら、実質の負担は10万〜40万円
先に結論をお伝えします。受講料(入学料+受講料)が50万円のIT・AIスクールの場合、どの給付金が使えるかによって、実質の負担はこのくらい変わります。
- 一般教育訓練の講座なら:実質40万円(10万円が戻る)
- 特定一般教育訓練の講座なら:実質25万〜30万円
- 専門実践教育訓練の講座なら:実質10万〜25万円
同じ50万円の講座でも、30万円近く差がつくことがあるんです。だからこそ、「受けたい講座がどの種類の対象なのか」を最初に確認することが、いちばん大切なポイントになります。
教育訓練給付金は3種類。戻ってくる割合がちがいます
教育訓練給付金は、雇用保険に一定期間入っている人(または離職して1年以内の人)が、厚生労働大臣が指定した講座を修了したときに、支払った費用の一部が戻ってくる制度です。講座のレベルによって、次の3種類に分かれています。
| 種類 | 戻ってくる割合 | 上限額 | 指定講座数 |
|---|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 20% | 10万円 | 3,485講座 |
| 特定一般教育訓練 | 40% (条件を満たすと最大50%) | 20万円 (最大25万円) | 1,532講座 |
| 専門実践教育訓練 | 50% (条件を満たすと最大80%) | 年間40万円 (最大で年間64万円) | 12,140講座 |
出典:厚生労働省「教育訓練給付等について」(令和8年10月9日、雇用保険部会資料)。講座数は令和8年10月時点。
「最大50%」「最大80%」になる条件
特定一般と専門実践は、講座を修了したあとに条件を満たすと、戻ってくる割合が上乗せされます。
- 特定一般教育訓練:修了後1年以内に資格を取ったり、就職したりすると、10%が追加されます(合計50%)。
- 専門実践教育訓練:修了後1年以内に資格を取ったり、就職したりすると20%が追加されます(合計70%)。さらに、受講前と比べて賃金が5%以上上がった場合は、もう10%追加されます(合計80%)。
専門実践の「最大80%」は、2024年10月1日以降に受講を始めた人が対象です。それまでは最大70%でした。
受講料別の早見表|実質いくらになる?
よくある受講料の価格帯で、戻ってくる金額と実質の負担を計算してみました。表の金額は「戻ってくる金額 → 実質の負担」です。
一般教育訓練(20%・上限10万円)
| 受講料 | 戻ってくる金額 | 実質の負担 |
|---|---|---|
| 30万円 | 6万円 | 24万円 |
| 50万円 | 10万円 | 40万円 |
| 80万円 | 10万円(上限) | 70万円 |
特定一般教育訓練(40%〜最大50%・上限20万〜25万円)
| 受講料 | 修了したとき(40%) | 資格取得などをしたとき(50%) |
|---|---|---|
| 30万円 | 12万円 → 実質18万円 | 15万円 → 実質15万円 |
| 50万円 | 20万円 → 実質30万円 | 25万円 → 実質25万円 |
| 80万円 | 20万円(上限) → 実質60万円 | 25万円(上限) → 実質55万円 |
専門実践教育訓練(50%〜最大80%)
| 受講料 | 修了したとき(50%) | 資格取得などをしたとき(70%) | さらに賃金が上がったとき(80%) |
|---|---|---|---|
| 30万円 | 15万円 → 実質15万円 | 21万円 → 実質9万円 | 24万円 → 実質6万円 |
| 50万円 | 25万円 → 実質25万円 | 35万円 → 実質15万円 | 40万円 → 実質10万円 |
| 80万円 | 40万円 → 実質40万円 | 56万円 → 実質24万円 | 64万円 → 実質16万円 |
※専門実践の表は、受講期間が1年以内の講座として計算しています。上限額は「年間」で決まっているため、2年以上の講座では、合計で戻ってくる上限も大きくなります。
※専門実践の給付金は、受講を始めてから6か月ごとに支給されます。追加分(70%・80%)は、修了して条件を満たしたあとに、まとめて差額が支給される仕組みです。
「80%」は、誰でももらえるわけではありません
最大80%はとても魅力的ですが、そのためには「資格の取得や就職」と「賃金が5%以上上がること」の両方が必要です。
編集部では、厚生労働省の検索システムに公開されている通信講座の「過去の実績」を集計しました。専門実践教育訓練の講座で、受講後に賃金が「上がった」と答えた人は約4割でした。くわしくは教育訓練給付金の対象講座の調べ方の記事で紹介しています。
ですから、お金の計画を立てるときは、まず「修了したときの50%」で考えておき、追加分は「もらえたらうれしいボーナス」くらいに考えておくのがおすすめです。
経済産業省の「リスキリング支援事業」とのちがい
受講料が安くなる制度には、教育訓練給付金のほかに、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」もあります。名前が似ていますが、しくみはかなりちがいます。
| 教育訓練給付金(厚生労働省) | リスキリング支援事業(経済産業省) | |
|---|---|---|
| 戻ってくる割合 | 20%〜最大80% | 受講料(税別)の1/2(上限40万円)+転職して1年続けると1/5(上限16万円)。合計で最大70%・56万円 |
| 対象になる人 | 雇用保険に一定期間入っている人など | いま働いていて、勤め先が変わる転職を目指している人 |
| お金の受け取り方 | 修了後に、ハローワークから本人に支給 | 講座を提供する事業者に補助され、そのぶん受講料が安くなる |
| 転職は必要? | 必要なし(いまの職場で働き続けてもOK) | 転職が前提 |
出典:経済産業省「転職をご検討の方|リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」
ざっくり言うと、いまの職場で働きながらスキルアップしたい人は教育訓練給付金、転職まで考えている人はリスキリング支援事業も候補になります。
リスキリング支援事業の対象者や補助の条件、IT・AIの講座を扱う事業者の探し方は、経産省のリスキリング支援事業とは?最大70%補助の条件とIT・AI講座の探し方で詳しく紹介しています。
なお、同じ講座で両方の制度を使えるかどうかは、公式サイトには明記されていません。「併用はできない」と案内しているスクールや比較サイトもあるので、申し込む前に、スクールに必ず確認してください。
給付金をもらいそびれないための5つの注意点
1. 専門実践・特定一般は「受講開始の2週間前まで」に手続きが必要
専門実践と特定一般の給付金を受けるには、受講を始める前に、キャリアコンサルタントによる「訓練前キャリアコンサルティング」を受けて、ジョブ・カードを作成する必要があります。そのうえで、受講開始日の原則2週間前までに、住んでいる地域のハローワークで手続きをします。
この手続きを忘れると、講座を修了しても給付金を受け取れません。申し込みを決めたら、まず最初にスケジュールを確認しましょう。
2. 対象になるのは「入学料と受講料」だけ
給付金の計算に使われるのは、スクールに支払った入学料と受講料の合計です。次のような費用は対象外なので注意してください。
- 検定試験の受験料
- 必須ではない補助教材の費用
- パソコンなどの機材の費用
- 通学のための交通費
- クレジットカード会社への手数料
また、割引を受けた場合は、割引後の金額で計算されます。
3. まずは全額を自分で支払う必要がある
教育訓練給付金は、修了したあと(専門実践は6か月ごと)に戻ってくるしくみです。受講を始めるときは、いったん全額を自分で支払う必要があります。分割払いを使う場合も、支払いが終わっていない金額は対象になりません。
4. 雇用保険に入っていた期間が足りているか確認する
初めて給付金を使う場合、雇用保険に入っていた期間が、一般・特定一般は1年以上、専門実践は2年以上必要です(2回目以降は原則3年以上)。自分が対象になるかどうかは、ハローワークで照会できます。
5. 前回の利用から3年あける・10年で192万円まで
過去に教育訓練給付金を受け取ったことがある人は、前回の受給から3年以上たっていないと使えません。また、専門実践教育訓練給付金は、最初の受講開始日から10年間で、合計192万円が上限です。
自分の受けたい講座が対象かどうかを調べよう
ここまで読んで、「自分が気になっているスクールはどの種類なんだろう?」と思った方も多いと思います。
実は、同じスクールでも、講座によって「一般」だったり「専門実践」だったりすることがあります。給付金の種類は、厚生労働省の「教育訓練給付制度 検索システム」で、講座ごとに確認できます。
検索システムの使い方は、画面つきで【画面つき】教育訓練給付金の対象講座の調べ方にまとめているので、あわせて読んでみてくださいね。
給付金を上手に使えば、学び直しのハードルはぐっと下がります。焦らず、自分に合った講座と制度を選んでいきましょう。
あわせて読みたい
参考にした公式情報
- 厚生労働省「教育訓練給付等について」(令和8年10月9日、職業安定分科会雇用保険部会資料)
- 厚生労働省「Q&A~専門実践教育訓練給付金~」
- 東京労働局「教育訓練給付制度」
- 経済産業省「転職をご検討の方|リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」



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